複雑すぎる!カルロス・ゴーン氏逮捕を解説!
またまた日産元会長であるカルロス・ゴーンさんが逮捕されましたね。
ニュースを見ていても全体像が把握できない…という方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。というわけで、この記事ではカルロス・ゴーンさん逮捕に関する情報をみなさんとシェアしていきたいと思います。
- そもそも、カルロス・ゴーンさんってどんな人?
- ゴーンさんは何の容疑で捕まったの?
- 金融商品取扱法違反を掘り下げる!
- 特別背任罪を掘り下げる!
- 問題の背景にいるのは、フランス政府?
- そもそも、ゴーンさんの報酬って高すぎじゃないの?
- 企業の不正を防ぐことはできないの?
- 大河の思うこと(所感)
そもそも、カルロス・ゴーンさんってどんな人?
両親はレバノン人で、ブラジルで誕生。フランスのグランゼコールである理工科学校と立高等鉱業学校を卒業し、ミシュラン(フランスの大手タイヤメーカー)に就職。そしてヘッドハンティングされルノーの上席副社長へ。ルノーの籍はそのままに、日産のCEOも兼任。2017年に日産のCEOを退任し、会長職へ。2018年に会長職を解任。
まさしく輝かしい経歴の持ち主で、何よりすごいのが超巨大2企業の経営を改善させた経歴を持つスーパーマンということですね。
グランゼコールって?
フランスにある高等教育機関です。大学とは異なり、高度な専門職業の育成を目的としています。つまり、超エリート養成学校とも言い換えられますね。マクロン大統領もグランゼコールを卒業しています。
なんでルノーと日産のCEOを兼任できるの?ライバル会社じゃないの?
日産はバブル崩壊後経営状況が悪化しました。その後生き残る手段として、ルノーの傘下に入り、現在ではルノー、日産、三菱自動車の三社で資本提携を結んでいます。
企業体としては別になりますが、同じグループ内にいるとイメージしてください。
つまり、ルノーと日産は同じ会社ってこと?
あくまで資本提携のみであり、同じ会社ではありません。簡単に言うと、それぞれ生産・技術面で協力し合い、株式もお互い所有し合う関係です。ただし、ルノーは日産に口を出せますが、日産はルノーに口を出せません。
これは、日本とフランスのそれぞれの会社法をもとに議決権(会議で口を出す権利)の有無が決まるからです。ちなみに、2018年時点で日産の筆頭株主はルノー(約44%)、ルノーの筆頭株主はフランス政府(約15%)です。
※ここの話はまた別記事で掘り下げます
ゴーンさんは何の容疑で捕まったの?
ゴーンさんは2018年11月に“金融商品取引法違反”で逮捕されました。その後3月に保釈されたものの、2019年4月4日に“特別背任罪”で再逮捕されました。
さらにその2018年から2019年にかけて、加えて2度逮捕されています。4度の逮捕劇は以下の通りです。(日産のガバナンス改善特別委員会からの方向資料をもとに作成:https://www.nissan-global.com/JP/DOCUMENT/PDF/GOVERNANCE/20190327TDnet_J.pdf)
“金融商品取引法”ってなに?
平成19年に施行された法律で、ものすごく簡単に言うと、“投資や経済を活性化させるために、ウソやごまかしのない市場を作りましょう”という法律です。(詳しくは金融庁を参照ください:https://www.fsa.go.jp/policy/kinyusyohin/index.html)
ゴーンさんは何に違反したの?
上場している会社が提出を義務づけられている、“有価証券報告書”で虚偽の報告を行いました。“有価証券報告書”というのは、「会社は今こんな経営状況で、こんなことにお金を使っていますよ」という会社の情報を公開する資料です。企業の“IR(Investor Relations)”というページで見られます。
日産は有価証券報告書で、ゴーンさんの報酬額を過少に報告していました。これが、「金融商品取引法違反」です。
・2011-2015年までの5年間で約50億円
・2016年-2018年までの3年間で約42億円
・合計で約92億円を過少報告
特別背任罪ってなに?
特別背任罪とは簡単に言うと、会社の役員や監査など権力を持った人が、その会社に対して財産上の損害を与えることです。
ゴーンさんは何でその罪に問われているの?
ざっくりと言うと、企業のお金を私的に利用し、日産に損害を与えたという罪に問われています。
金融商品取扱法違反を掘り下げる!
そもそも、有価証券報告書って誰が作成するの?
企業にもよりますが、たいていの場合は経理部門が作成します。
作成された有価証券報告書は誰もチェックしないの?
有価証券報告書やその計算資料などは、企業から依頼された監査法人がチェックし、虚偽・おかしな点がないかを確認します。
なぜ誰も気づかなかったの?
この過少報告は、すでに支払った金額を少なく報告したわけでなく、ゴーンさんが「今年の私の報酬は20億円にします! でも20億円ももらうとイメージが悪いし、今年は10億円もらって、退任後に10億円ちょうだいね!」という報酬の繰延を日産と合意する資料を作成していました。
※”日産と合意する資料”と書いてますが、これは日産の資料内にある退職後の処遇に関して、ゴーン氏は、グローバル人事及び法務の責任者であるケリー氏を通じて、現 CEO の署名が付された書面を取得した。という文面から、日産と合意と記載しています。これがどこまで認識されたのかは現時点で不明です。
この場合、どこにもお金が流れていないので、「お金の流れをチェックする監査法人」や「お金を出し入れする経理」は簡単には気づけなかったと思われます。
実際には支払われていないのに、当年度に会計処理するの?
ダイヤモンドオンラインで八田進二青山名誉教授が、この問題についての見解を述べています。※下線部分は引用
「退任後なら、役員退職慰労金扱いであり、今は記載する必要はないのでは」との見方もあるようですが、役員退職慰労金とは在任年数などを勘案して、退職時に決めるものです。「2010年は10億円、2011年も10億円」といった具合に毎年、金額を決めて契約していたのなら、それぞれ当該年に会計処理すべきです。
(引用:https://diamond.jp/articles/-/186764)
また、EY新日本監査法人さんが役員報酬と退職慰労金の会計処理について説明してくださっています。こちらの解説を読んでもやはり、会計処理する必要があるように思えます。※ちなみに日産の監査法人
(参考:https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/other/2014-05-30.html)
ちなみに、ゴーンさんが決めた報酬の支払いは“秘書室”が担当しており、他部署にその情報が流れることはなかったそうです。(日産資料より:https://www.nissan-global.com/PDF/190327-01_368.pdf)
どうやって有価証券報告書の“ウソ”がわかったの?
2018年夏頃に“ゴーンさんが不正行為してるよ!”という内部通報を受けて、社内で調査を開始し、判明しました。(日産資料より:https://www.nissan-global.com/PDF/190327-01_368.pdf)
特別背任罪を掘り下げる!
ゴーンさんは会社のお金を私的に使っていたと報道されています。具体的には以下の通りです。ただし、デリバティブ取引については明確な記事が出ていないので、また後日みなさんと情報をシェアしたいと思います。(日産資料より:https://www.nissan-global.com/PDF/190327-01_368.pdf)
・オランダの子会社を通じて、ゴーンさんが使用する住宅およびその改装費用を
日産が支払った
・ゴーンさんの姉に対し、日産から顧問料が支払われたが、その成果物は見つからず
・日産のコーポレートジェット及びチャータージェットを家族の私的用途に利用
・新生銀行とのデリバティブ取引を日産につけかえ、
日産に実損が発生したが、ゴーンさんから実損分が日産に支払われた
どうやって会社のお金を私的に利用したの?
“CEOリザーブ”と呼ばれる“CEOが承認していれば支出できる部門の予算外のお金”を使って、サウジアラビアの友人やオマーンの販売代理店に会社の資金を流出したと報道されています。
そしてその中東の代理店からゴーンさんの口座にお金が流れていたようです。
問題の背景にいるのは、フランス政府?
この問題、もともとはルノーが日産を“資本提携”ではなく“合併”しようとしたことに始まります。ルノーの筆頭株主であるフランス政府としては、「金のなる木」である日産を獲得したいところですね。その理由としては以下が考えられます。
経営状況が改善した日産からすると、ルノーに合併・買収されても得はないわけです。この対抗策として、ゴーンさん(ルノー)を日産から追放するクーデタになったのではないかと報道されています。
そもそも、ゴーンさんの報酬って高すぎじゃないの?
参考までに、まず国内での役員報酬のランキングを見てみると、ゴーンさんは有価証券報告書に基づくと、国内18位ですね。仮に10億追加で受け取っていたとしても、4位です。
さらにこれを日米欧の売上高1兆円企業のCEO報酬水準で見てみます。
有価証券報告書に基づけば、欧州のほぼ水準で、繰延分を含めればアメリカの水準を満たすくらいですね。
こうしてみるとゴーンさんの報酬が突出して高いとは言い難いかなと思います。
たしかに昨今CEOの報酬過多は叫ばれていますが、成果を鑑みれば、妥当なんじゃないかなと感じます。
※ただし報酬比較はもっと細かく比較すべき+ゴーンさんの私的利用分がわからないので、何とも言えないのが正直なところ
企業の不正を防ぐことはできないの?
企業の不正を防ぐ仕組みを「コーポレートガバナンス」と言います。
このコーポレートガバナンスを機能させるためには、社内で権力を一点集中させないなどの仕組みを作ることはもちろん、外部機関である監査法人や社外取締役を有効活用する必要があります。
しかし正直なところ、外部機関はその企業が任命するため、そこに契約が生まれてしまう以上、不正を100%防ぐのは難しいと考えられます。
大河の思うこと(所感)
今回この問題を取り扱うに際して、日産の報告資料を読みましたが、特に笑ってしまったのが「誰もゴーン氏に異を唱えない企業風土」という一文でした。きっと、本当に誰も何も言えない状況だったのでしょうね。
そしてここまで「ゴーンさん悪!」のように書いてきましたが、ゴーンさん側の反論を聞かないと何とも言えないところです。
あとは、監査法人側のコメントも気になるところですね。この不正は”防げるのに、見てみぬふりをした”のか”本当に気づけなかった”のか、今後の監査法人としての在り方も問われる裁判になるんじゃないかなと。まあ変わらないだろうけど…
というわけで、本日の記事はここまでです!
気になる出来事があれば、コメント欄などでシェアして頂ければ嬉しいです。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!