ビジネス虎の巻

難しい政経問題をやさしく解説!

三つ子暴行死事件に思う、日本社会の母性神話

2018年1月、痛ましい事件が起きました。

この事件と大河の思うことを今日はシェアしたいと思います。

愛知県豊田市で生後11か月の3つ子の1人に暴行を加えて死亡させた罪に問われた母親の裁判で、裁判所は「3つ子の育児を懸命に行ったことに同情はできる」とした一方、「執行猶予をつけるほど軽い事案ではない」として懲役6年の求刑に対し3年6か月の判決を言い渡しました。

愛知県豊田市の松下園理被告(30)は去年1月、自宅で生後11か月の3つ子のうち次男を床にたたきつけて死亡させたとして傷害致死の罪に問われました。

裁判で被告は「泣き声が耐えられなかった」と話し、弁護士は「周囲の支援がなく重度のうつ病だった」として執行猶予のついた判決を求めていました。一方、検察は「乳児が泣くのは当然で動機は身勝手だ」として懲役6年を求刑していました 。 

引用:NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190315/k10011849981000.html

 

そもそも、傷害致死ってなに?

傷害致死とは、刑法205条によって「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する」と規定されています。

 

殺人罪との違いは?

殺意をもって殺した場合、殺人罪に問われますが、殺意をもっていなかった場合、傷害致死で起訴される可能性があります。つまり、「殺してやる」などと思っていたことが検察側に認識された場合、「殺人罪」と起訴され、「殺すつもりはなかったが、結果として殺人になった」場合は傷害致死で起訴される可能性があります。

 

執行猶予ってなに?

執行猶予は,前科がない者などについて,3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金を言い渡すときに付けることができます。

引用:裁判所(http://www.courts.go.jp/saiban/qa_keizi/qa_keizi_28/index.html

たとえば「懲役3年・執行猶予5年」という場合、刑の言い渡しを受けてから5年間、罪を犯すことなく過ごしたならば、この刑の言い渡しそのものが無効となり、懲役に行かなくても良い、ということになります。ただし、執行猶予期間中に何らかの罪を犯し有罪となると、執行を猶予されていた刑も受けなくてはならなくなります。

引用:法律事務所オーセンス(https://keiji.authense.jp/column/keiji-8.html

 

どんなケースで執行猶予になるの?

殺人を犯した場合でも執行猶予が付与されることがあります。

例えば、以下のような場合です。

介護疲れや無理心中の事案では、献身的な介護ぶり、介護の苦しみ、絶望感などを裁判所が理解し、比較的執行猶予が付くようです。

引用:弁護士ドットコムNEWS(https://www.bengo4.com/c_1018/n_6994/

 

執行猶予はどのくらいの割合で付与されているの?

平成28年犯罪白書によると、地方裁判所で行われた通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)の科刑総数は51,658件で、うち30,974件の判決に「執行猶予」が付いています。約半数近い数ですね。

 

どうして今回は執行猶予がつかないの?

一般的に、被害者が乳幼児だった場合に刑罰が重くなる傾向にあります。
今回のケースでは、11か月と抵抗のできない幼児だったことから「執行猶予をつけるほど、情状酌量の余地はない」と裁判長が考えられたと思われます。

 

父親や両親は何をしていたの?

報道によると、父親は産休を取っていたものの、事件当時は、仕事に復帰し夜勤に行っていたそうです。また、産休取得中はおむつの取り換えなどを見て、母親は「夫には頼れない」と判断したそうです。そして両親は飲食店を営んでおり、頼るのが難しい状況だったそうです。

つまり、夫にも両親にも頼れない、いわゆる「ワンオペ育児」だったようです。

 

大河の思うこと(所感) 

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もしもこのケースが母親でなく父親だったら、どんな判決になったのだろうかと考えました。
もしも父親であったら(母親が働いていて、専業主夫だったら)「3つ子の育児という過酷な状況において、睡眠時間が1時間しか取れず、判断能力が大きく欠如していたと考えられる。情状酌量の余地ありで、懲役2年で執行猶予3年…」といったような判決が言い渡されたのではないかと思っています。
というのも今の世の中において、母親たちが育児は大変だ!と叫んでいるにも関わらず、「母性神話」がいまだに根強く残っているように感じるからです。
今回のケースでは、「母親なのだから、子供を愛して当然であり、それができない場合、通常と逸脱しており、情状酌量の余地はない」という概念が根底にあるように感じます。
私は出産も育児も経験もありませんが、3つ子の育児が相当過酷であることは簡単に予想されます。そして、睡眠1時間では判断能力を相当失うということは自分の経験(働きすぎ)から十分に理解できます。


もちろん殺人は許されるべきではありません。


ですが、正直なところ、執行猶予なしは余りにも重いのではないかと考えています。
子供のためにも、母親のためにも、更生の余地を与えるべきだと思います。

 

今回の記事は政治でも経済でもない内容でしたが、深く考えさせられるニュースだったので、シェアさせて頂きました。

ちょうど欧州・アジアにおけるジェンダー問題を調査中だったので、これはシェアせねば!と思った次第です。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました!